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2017年12月 4日 (月)

栃餅作りの取材

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 12月4日、秩父の大滝に栃餅の取材に行った。取材したのは栃餅作り名人と言われている磯田エミ子さん(73歳)だった。風邪気味で体調が今ひとつだったのだが、二十日前から準備してもらっていた取材だったので無理して出かけた。
 栃餅は秩父の名物だが、その作り方はおそろしく手間の掛かるものだ。そして、名人と言われる人はかならず自分なりの作り方を持っている。厳密に言うと一人一人、家毎に作り方が違うと言っていい。
 
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 エミ子さんの栃餅は灰がポイントだという。カラカラに干した栃の実を二十日間かけて柔らかくする。樽の水を毎日替えるのだが、水を替える前に大きくかき回してアクと汚れを流す。ホースで水を注ぐと洗剤のような泡が出る。サポニンが抽出されている状態で、これが出来ないと苦みが消えない。
 二十日後、柔らかくなった栃の実を鍋で80度まで温め、すいのうで取り出す。そこにポイントとなる灰を二升程加え、鍋の湯も加えてかき回し、そのままひと晩放置する。この間に灰が効いて栃の実が食べられるようになる。灰がサポニンを分解する過程だ。エミ子さんは時々栃の実を取り出して確認する。灰が効いているかどうかを長年の勘で見極める。この見極めが難しい。何度やっても同じには出来ないという栃餅作りの肝になる部分だ。
 
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 いろいろ話を聞いた。今まで様々な人の栃餅作りを見てきたし、食べ比べてもきた。その中でもエミ子さんの栃餅は別格だった。苦くないのだ。しかし、栃の量が多く色は鮮やかなオレンジ色で食べると栃の香りが口に広がる。本当に食べやすくて旨い栃餅だった。
 エミ子さんにしつこく話を聞いたのだが、どうやら灰に違いないという結論になった。磯田家では栃餅作り用に日々灰を作っている。それも楢・クヌギ・ケヤキなどの良木だけを燃して作る灰だ。最近はなるべく心材だけを燃して灰を作っている。灰の種類によって灰の効きはずいぶん違うという。それは経験でわかるというのだ。
 一回に四升、12月だけで120キロの栃餅を作るというエミ子さんの言葉だから信憑席がある。普通の人はそれだけの量を作ることはない。
 
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 それにしても栃餅作りは難しい。取材していても疑問が出る事ばかりだ。こんなに手間をかけて作るのに、その大変さが伝わらないのももどかしい。自分では絶対に出来ない事だし、その難しさをどう伝えればいいのかと悩む。
 食べるとあんなに旨いのに、どうしたらあの味になるのかいくら考えてもわからない。経験によるもんだから……というエミ子さんの言葉に救われたような、打ちのめされたような複雑な思いだった。
 
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